研究概要 |
文書による同意の得られた2名の陰茎癌患者の摘除標本から、正常の陰茎海綿体平滑筋組織を用いて初代培養を行った。陰茎海綿体を無菌下で細切し、コラゲナーゼやトリプシンによる酵素処理を行い適当な培地で培養することに成功し、2種類の細胞株を樹立しえた。これらの細胞株は数回の継代では安定した増殖能を示した。2種類の細胞株ともに免疫染色では、細胞株は一様にdesmin,α-smooth muscle actin, calponinの抗体で陽性でありcytokeratin, CD31の抗体では陰性であった。さらに細胞から抽出した蛋白を用いたウエスタンブロットでも同様の結果がえられた。これらのことから、樹立した細胞株は上皮細胞や血管内皮細胞ではなく平滑筋細胞株であることが確認された。 次に男性ホルモンによる影響をみるため、これらの細胞株におけるアンドロゲンレセプターの有無を検討した。ウエスタンブロットでアンドロゲンレセプター蛋白の発現を認めなかった。また男性ホルモン(テストステロン、DHT)の添加実験では、細胞増殖に関して増殖効果を認めなかった。 陰茎の勃起のメカニズムには一酸化窒素(NO)が関与している。これら陰茎海綿体平滑筋細胞株とNOの関連を調べるために、現在、種々の薬剤(NO donor, NOS inhibitor, PDE5阻害薬など)を投与し細胞の増殖に関する検討を行っている。また,NO合成酵素の発現の相違について免疫染色やウエスタンブロットで確認を行っている。
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