1)泌尿器癌におけるKu70、アンドロゲンレセプター、Tip60の免疫組織化学的検討 手術により摘除された前立腺癌組織において、アンドロゲンレセプター(AR)、およびその共役因子であるTip60、Ku70について免疫組織化学染色を行った。Tip60、Ku70については、膀胱、腎、精巣など、他の泌尿器科臓器についてもその正常粗織および癌組織について免疫組織化学染色を行った。その結果、Ku70抗体による免疫組織化学染色において、ほとんどの正常腎組織の腎尿細管上皮および腎皮質腺腫では核にKu70の発現が認められたが、腎癌ではほとんどの細胞において発現がみられなかった。そこでDNA修復機構のうち非相同末端結合においてKu70との相互作用を有することが知られているKu86、DNAPKcsについても正常腎組織および腎癌組織に対し免疫組織化学検討を行った。その結果、Ku70と同様、正常腎組織の尿細管上皮および腎皮質腺腫ではKu86、DNAPKcsの発現が認められたが、腎癌では多くの細胞で発現が消失していた。MRE11、NBS1など、相同組み換えによるDNA修復機構に関与する蛋白群についても免疫組織化学的検討を行ったが同様の傾向はみられなかった。腎癌の発生において、非相同末端結合を介したDNA修復機構の破綻が関与している可能性が示唆された。 2)アンドロゲン非依存性前立腺癌細胞株の樹立 アンドロゲン依存性前立腺癌細胞株LNCapをアンドロゲン除去下で長期間培養することにより、アンドロゲン非依存性増殖能を獲得した細胞株を樹立した。現在その増殖特性についてMTTアッセイにより解析中である。
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