研究概要 |
今年度の研究では、pVHL(von Hippel-Lindau腫瘍抑制遺伝子産物)が正常に機能しておりHIF(Hypoxia Inducible Factor)1αとHIF2αのいずれもが低酸素環境下で誘導され得る腎細胞癌株ACHNを使用しました。この細胞にpBABE-vector(遺伝子を恒常的に発現し得るレトロウイルスベクター)とpRETRO-SUPER vector(shRNAを恒常的に発現するレトロウイルスベクター。いずれのベクターもProf. Kaelin(Dana-Farber Cancer Institute, USA)より譲渡)を用いて、HIFαのサブタイプを個々に発現増強もしくは発現抑制した細胞群(Polyclonal stable clones)を樹立しました。 この細胞群をCell culture dishes上で培養し、その増殖速度を各細胞群間で比較してみましたが、有為な差は見られませんでした。これは既に他の研究室から報告されているHIFαの発現調整実験の結果と一致しています。現在この細胞群をヌードマウス皮下に投与しxenograftの成長速度を比較する実験を進めています。 またこれらの細胞群でHIFにより転写が誘導される遺伝子の発現についてもウエスタンブロットによる比較を行いましたが、少なくともGlut-1(Glucose Transporter-1)についてはHIFαのサブタイプによる転写誘導の差は見られませんでした。他の転写誘導遺伝子についても現在ウエスタンブロットとリアルタイムPCRを用いて検討を行っています。 現在進行中の実験結果を見た上で、マイクロアレイや2次元電気泳動+質量分析による未知のエフェクター遺伝子の同定を行っていく予定です。
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