研究概要 |
本研究では転移性腎細胞癌患者T細胞アポトーシスをおこすメカニズムを解析することで、腎細胞癌の新たな治療戦略を構築することを目的している。平成17年度は腎細胞癌がT細胞をアポトーシスへ誘導する際に免疫抑制機構の一つであるヘルパーT細胞比のTh1/Th2バランスがTh2に傾くことを確認するため以下の検討から有意義な結果が得られた。 1.APO-BrDUキットを用いた末梢血T細胞アポトーシスの解析 T細胞アポトーシスはDNA断片化をBr-dUTPで検出しフローサイトメトリー(TUNEL)にて解析した。結果コントロールに比較し、患者では約3倍のT細胞アポトーシスが観察された(n=8)。 2.患者血清サイトカイン測定 進行性腎細胞癌患者(n=12)の治療前(腎摘除術)と治療後(手術2週後)のサイトカイン濃度を同じ血清サンプルから同時に測定した(Th1:IL-2,IL-12,IFN-γ,Th2:IL-4,IL-5,IL-10,IL-13,GM-CSF, TNF-α)。結果、局所浸潤腎癌では静脈浸潤(-)群では静脈浸潤(+)群に比べIL-2,IFN-γのTh1サイトカインが強く検出された。より癌が進行した骨または肝転移(+)症例ではTh1サイトカイン誘導はほとんど検出されなかった。以上の結果から以下の解析がなされた。 1.本検討における転移性RCC患者の治療前末梢血T細胞のアポトーシス誘導は細胞性免疫の抑制状態を反映していると考えられた。 2.Th1細胞はIL-2,IFN-γ、TNF-αをそれぞれ産生する。腎摘によりTh1側へシフトし、Th1CD4T細胞からTNF-αが産生され、腎癌抗原認識のための細胞性免疫能が活性化されたと考えられる。TNF-αは主に活性化細胞障害性T細胞より分泌されるため、局所浸潤腎癌症例では腎摘により細胞障害性T細胞の免疫抑制がある程度解除されたと考えられる。 平成18年度実験項目: インターフェロンαを投与し転移巣が縮小または不変の症例において、細胞性免疫応答がどのように修飾されているかを確認するため腎細胞癌患者末梢血おけるCD4/CD8比をフローサイトメトリーにて解析を行う。またT細胞内サイトカイン検出(IFN-γとIL-4)をフローサイトメトリーで行い、インターフェロンα有効群におけるTh1/Th2バランスを解析しサイトカイン療法個別化を目的とする。
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