研究概要 |
精巣内で精子形成に必要なandrogenの生成のため、マウスなどのげっ歯類と異なり、通常ヒトでは主にΔ^5pathwayを用いるためΔ^4-C_<21>steroidの産生はあまり起こらない。昨年度までに、造精機能障害を示すヒト精巣では、精子形成の良好な精巣と比較して、Δ^4-C_<21>steroidであるprogesteroneや17α-hydroxyprogesterone含有が多く、in vitro代謝実験でも多く代謝されることを示し、造精機能障害における代謝経路変更の可能性を示唆してきた。今年度はさらに他の代謝物の解析を行ったので報告する。 血中T濃度が正常な患者の造精機能障害を示す精巣及び精子形成の良好な精巣のcell homogenateを調整、遠心後上清をサンプルとし、^<14>Cでlabelしたpregnenolone,progesteroneを基質とし補酵素を加えin vitro代謝実験を行った。代謝物は、薄層chromatography(TLC)にてベンゼン:アセトン=4:1溶媒にて分離した。この分離条件下で標品androstenedioneと同じ移動度を持つ代謝物Aを2ndTLC(ベンゼン:酢酸エチル:アセトン=8:2:1溶媒)上で分離、また、標品testosteroneと17α,20β-dihydroxy-4-pregnen-3-one間に移動度を持つ代謝物Bをそれぞれシリカゲルから抽出し、酸化、アセチル化、再結晶法により標品と比較同定を行った。結果、造精機能障害を示す精巣では、代謝物Aは5βpregnan-3β-OL-20-oneであり、代謝物Bは5α-pregnan-3α,21diol-20-oneであることが明らかとなった。これらのステロイドは、正常なヒト精巣で代謝されると報告があるステロイドとは、異なる代謝物である。今後は他の代謝物の解析を行うとともに、代謝経路に関わる代謝酵素の増減も含めて検討を行っていく予定である。
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