研究概要 |
精子運動抑制因子(seminal plasma motility inhibitor, SPMI)と、その前駆物質で精液凝固体の主な成分であるSemenogelin(Sg)に関する基礎検討として、受容側である精子におけるSPMI作用部位と受容体の同定を目的として以下の検討を行った。 1)percollにて洗浄した正常ボランティアおよび精子無力症患者の精子を抗SPMI抗体にて免疫染色し、光学及び電子顕微鏡にて、SPMIの精子における局在・結合量の違いを観察した。その結果、正常な精子膜上にはSgは結合していないことが明らかになった。Sgは精子細胞膜の損傷部位に結合していたことから、精子膜上にSgの受容体は存在しない可能性もあるが、除膜精子や、精子無力症患者の精子では精子内部構造にSgが結合しているような像も得られているため、今後は精子膜タンパク質に限定せずに検索する必要があるものと考えられる。 2)水晶発振子マイクロバランス装置を用いた予備実験としてまず、SPMI活性部分にエピトープを持つ抗Sgモノクローナル抗体(F11)を発振子に固定し、抗原であるSgと精子及び精子膜抽出物との競合的阻害を観察した。その結果、精子とSgを同時にチャンバーに添加するとSgはF11抗体に結合せず、Sg単独では結合した。つまり、精子がSgとF11抗体の結合を阻害した。次に、結合の見られなかった精子+Sgに、通常膜抽出に用いるTriton X-100を添加すると、コントロール(Sgのみ)に比べて多い結合が見られた。また、発振子にSgを固定した場合に精子抽出物の添加で何らかの結合が見られた。現在、発振子上に結合した精子抽出物中タンパク質をSDS-PAGEならびにWestern blottingを用いて解析中である。
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