研究概要 |
精子運動抑制因子(seminal plasma motility inhibitor, SPMI)と、その前駆物質で精液凝固体の主な成分であるSemenogelin(Sg)に関する基礎検討として、受容側である精子におけるSPMI作用部位と受容機構の解明を目的として以下の検討を行った。 1)精子に結合したSPMIの免疫組織化学的手法による検討 精子無力症患者と健常ボランティアの精子では抗Sg抗体による染色性が光学顕微鏡による観察で異なっていたことから、これを定量化するためフローサイトメトリーを用いた解析法を検討した。その結果、抗Sg抗体結合率は患者で健常男性に比較して有意に高く、精子運動率および生存率との間に強い負の相関が認められた。抗Sg抗体結合量も同様に患者は健常男性より有意に高く、精子運動率および生存率との間に負の相関を認めた。また抗Sg抗体の結合率と結合量には正の相関が認められた。抗Sg抗体結合率が高い検体では抗Sg抗体結合量も多く、その傾向は患者群においてのみ有意であった。 2)水晶発振子マイクロバランス装置を用いた検討 これまでの検討で、Zn^<2+>存在下において高濃度Sg(2.5-10mg/ml)ではSg同士が凝集し、精子運動を抑制することが分かっている。これを水晶発振子マイクロバランス装置により検証したところ、精子膜抽出物存在下でSgに対するSgの結合がZn^<2+>添加により促進されることが示された。しかし、添加Sgが1.5mg/mlを越えると溶液中で凝集を始めるため本装置での測定は不可能となった。Sg単独では凝集がおこらないことから、高濃度のSgが凝集を引き起こすには、Zn^<2+>ならびに精子膜成分が重要な役割を担っていることが示された。
|