【実験】誘発排卵時に得られる未成熟卵子は体外培養することでMII期へと移行し成熟卵子となる。このヒトIVM卵子には高頻度に姉妹染色分体早期分離(PSC)が生じるとともに受精後の胚盤胞発生率が低いという加齢卵子と共通の特徴がみられる。このことから我々はIVM卵子を加齢卵子の救済法研究のモデルとして実験利用し、GV期にタキソール処理することで上述の加齢卵子と共通の特徴が改善されることを既に報告した。今回はタキソール処理したIVM卵子において細胞骨格の構成要素である微小管及び染色体の配列と分配に関わるオーロラ蛋白の分布を蛍光免疫染色法により検索した。採卵時に得られたGV卵子を0.05μg/m1タキソールで2時間処理し、処理直後及び体外培養後のMII期にホルマリン固定した。PBSで卵子を洗浄後、一次抗体にマウス抗チューブリン抗体及びウサギ抗オーロラA抗体を、二次抗体にローダミン標識抗マウス抗体及びFITC標識抗ウサギ抗体を用いて免疫染色を行った。タキソール未処理群を対照とした。また抗体の有効性を確認するためマウスGV期及びMII卵子をポジティブコントロールに用いた。【結果】ヒトGV期において未処理群ではチューブリンが表層に分布したのに対しタキソール処理群では細胞質全体に分布する傾向があった。ヒトMII期では未処理及び処理群共にチューブリンは紡錘体を形成するとともに表層に分布した。マウスGV期及びMII期においてもヒト卵子対照群と同様の傾向であった。一方、オーロラ蛋白はヒト卵子では核への局在が認められなかったが、マウスではGV期及びMII期共にDNAに強く局在していた。【結論】タキソール処理によりチューブリンが細胞質全体に分布することでPSCが抑制されている可能性が示唆された。ヒト卵子ではオーロラA分布がマウスと異なる可能性が示唆されたが、染色条件などの影響も考えられた。
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