1.発現実験ヒト卵巣顆粒膜細胞不死化株(KGN細胞)にヒトFSH受容体を遺伝子導入し、受容体を過剰発現している細胞系を確立した。遺伝子導入の方法としてリン酸カルシウム法とリポフェクション法、エレクトロフォレーション法を比較したところ、導入効率ではリポフェクション法が優れていた。ヒトFSH受容体の発現量を125-Iで標識したFSHを用い計測したところ、リポフェクション法では一細胞あたり約5万分子の受容体の発現を認めた。G418による遺伝子導入細胞のスクリーニングを行い、恒常的にヒトFSH受容体を過剰発現している細胞株の樹立を試みたが、今日まで恒常的に受容体を発現している細胞株を獲得していない。 2.ヒトFSH受容体の機能の解析遺伝子導入によって発現したFSH受容体が機能を有しているか確認するため、顆粒膜細胞をFSH刺激した。FSH刺激によるセカンドメッセンジャーの産生を確認するため、細胞内cAMPをRadio-immuno assayで測定したところ、添加するFSHの用量依存的な細胞内cAMP蓄積の増加が確認された。Inositol phosphateの産生をイオン交換クロマトグラフィーで検出したが、FSH刺激による変化は観察されなかった。 3.FSH刺激による顆粒膜細胞の細胞内シグナル伝達系の変化を観察するため、estradiolなどのステロイド産生やリン酸化ERKやリン酸化Aktなどの活性化の検出を試みたが、今日までFSH添加による明らかな変化は観察されていない。
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