本研究の目的は、子宮体癌原発巣組織(70例)を用いて、未だ不明な点の多い腫瘍細胞と腫瘍関連マクロファージ(tumor-associated macrophage : TAM)との相互作用について検討を行う。当年度は、in vitro、動物実験等でマクロファージの細胞傷害活性および抗原提示能を抑制するとされているcycloocygenase(COX)-2、mucinの腫瘍細胞における相対的発現量を免疫組織化学染色にて検討した。その上で今までの我々の研究において子宮体癌における予後予測因子であることが示唆されている腫瘍細胞巣へのTAM(CD68陽性細胞)の浸潤の程度および固形腫瘍における抗腫瘍免疫の指標とされる腫瘍細胞巣へのT cell(CD8陽性細胞)の浸澗の程度に及ぼす影響について統計学的解析を行った。その結果、腫瘍細胞COX-2高発現群において、腫瘍細胞巣へのTAMおよびT cellの浸潤の程度は、低発現群に比べ統計学的有意差をもって低値となった(それぞれ、p<0.01、p<0.001)(Int J Cancerにて報告)。また、腫瘍細胞mucin高発現群において腫瘍細胞巣へのT cellの浸潤の程度は、低発現群に比べ統計学的有意差をもって低値となった(p<0.05)。また腫瘍細胞のmucin発現は、腫瘍細胞およびTAMにおけるCOX-2の発現と相関しており、COX-2を介した免疫抑制に関与していることが示唆された。さらに、当年度において、マクロファージの活性を抑制するその他の因子として、vascular endothelial growth factor(VEGF)、tumor growth factor(TGF)-βの免疫組織化学染色を行った。
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