本研究は、婦人科悪性腫瘍組織内における腫瘍関連マクロファージ(tumor-associated macrophage : TAM)の機能、特に宿主免疫能に与える影響に関して検討することでがんの免疫療法の発展を目指すことを目的としている。 1.悪性腫瘍細胞が産生する因子とマクロファージ機能との関係 ヒト子宮体癌原発巣組織(70例)を用いて、in vitro等の実験系でマクロファージの細胞傷害活性・抗原提示能を抑制するとされているcycloocygenase (COX) -2およびmucinの腫瘍細胞における発現量と腫瘍細胞巣へのTAMの浸潤の程度および固形腫瘍における抗腫瘍免疫の指標とされる腫瘍細胞巣への細胞傷害性T細胞(cytotoxic T lymphoxyte : CTL)の浸潤の程度に及ぼす影響について検討を行った。その結果、腫瘍細胞のCOX-2高発現群において、腫瘍細胞巣へのTAMおよびCTLの浸潤の程度は、低発現群に比べ低値となった(それぞれ、p<0.01、p<0.001)。 また、腫瘍細胞のmucin高発現群において腫瘍細胞巣へのCTLの浸潤の程度は、低発現群に比べ低値となった(p<0.05)。また腫瘍細胞のmucin発現は、腫瘍細胞およびTAMにおけるCOX-2の発現と相関しており、腫瘍細胞の産生するmucinが、COX-2を介した免疫抑制に関与していることが示唆された。 2.マクロファージを活性化させる天然物質の探索 抗腫瘍活性マクロファージの誘導を目的として、ヒト単球由来の培養細胞(THP-1)を用いて、天然物質による活性化を検討した。当年度はフランス海岸松エキス(ピクノジェノール)による、THP-1の形態的・機能的変化を検討したところ、CD86の発現増強などTHP-1の樹状細胞化が確認された。
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