1、目的:血管内血栓形成過程は血管内皮細胞の障害部位における内皮下組織への血小板の粘着により開始される。粘着血小板は形態変化とともに細胞内カルシウム濃度([Ca^<2+>]i)の上昇がトリガーとなりフィブリノーゲンを分子糊として血小板凝集塊を形成する(血小板血栓)。この血小板凝集塊を足場として血液凝固反応が惹起されフィブリノーゲンはフィブリンとなり、血小板血栓はより強固な凝固血栓に至る。凝固反応の開始には、血小板内[Ca^<2+>]iの持続的上昇よるPhosphatidylserineの細胞内膜から外膜への露出が必須でありPhosphatidylserineの細胞膜表面への露出を血小板活性化のマーカーに応用する。妊娠高血圧症候群の病因に血小板の活性化が上げられているが、正常妊娠においても血小板の活性化は起こっている。妊娠マウスを使用し血小板のアゴニストによる血小板内[Ca^<2+>]i変化パターンとPhosphatidylserine発現パターンを解析した。 2、方法:妊娠マウスは野生型マウスC57BL6/Crを使用し非妊、妊娠9日、妊娠18日、産後4週間と4群設定した。洗浄血小板を作成しCalcium sensitive dye(Fluo-4)を導入、FibirinogenでコートしたGlass bottom dishへ粘着させトロンビン1 U/mlで刺激しその[Ca^<2+>]i変化とPhosphatidylserine発現パターンは蛍光標識アネキシンVを用い解析した。 3、結果:血小板[Ca^<2+>]iパターンはトロンビン付加前はoscillationを示し、付加後三つのパターンを認めた。パターン(1):付加直後[Ca^<2+>]iは直ぐに上昇しそのままsustain、パターン(2):タイムラグを持ってsustain、パターン(3):oscillationのまま。Phosphatidylserine発現はパターン(1)と(2)のみsustain後に認められた。非妊、妊娠9日、妊娠18日とパターン(1)、(2)の割合は増加していった。産後4週間ではその割合は減少した。 4、結論:妊娠日数とともに血小板はPhosphatidylserine発現という面からみて活性化しやすい状態と言える。
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