研究概要 |
まず子宮内膜細胞を上皮細胞と間質細胞に分離培養した。それぞれの細胞におけるendothelin-1(ET-1)の産生を測定した。ET-1は主として子宮内膜上皮細胞より産生されており、間質細胞での産生はわずかであった。続いて子宮内膜間質細胞にET-1を添加し、Aktのリン酸化を検討した。子宮内膜間質細胞においてET-1によりAktのリン酸化が亢進した。さらにエストロゲンとプロゲステロン処理によって培養内膜間質細胞に脱落膜化を誘導した。脱落膜化によりET-1を基質とする細胞表面酵素、neutral endopeptidase(NEP)が誘導された。この脱落膜化間質細胞に、同様にET-1を添加した場合はAktのリン酸化は亢進しなかった。またNEPの発現のない非脱落膜化間質細胞においてNEPを培養上精中に添加した場合も、同様にET-1によるAktのリン酸化は抑制された。このことは、子宮内膜間質細胞に対するET-1の作用がNEPで調節されることを示唆するものであった。さらに、このET-1の作用がどのような経路を介しているかを調べるため、endothelin receptor blockerとPI3K inhibitor, MAPK inhibitorを用いた実験をおこなった。その結果、間質細胞におけるET-1によるAktのリン酸化は、endothelin type A receptor blockerおよびPI3K inhibitorで抑制され、endothelin type B receptor blockerおよびMAPK inhibitorでは抑制されなかった。この結果により、ET-1によるAktのリン酸化はendothelin type A receptorとPI3Kを介していることが明らかとなった。
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