昨年度までの研究により、1.子宮内膜細胞にいてはendothelin-1(ET-1)は主として子宮内膜上皮細胞より産生されていること、2.子宮内膜間質細胞にET-1を添加するとAktのリン酸化が亢進すること、3.エストロゲンとプロゲステロン処理により誘導された脱落膜化内膜間質細胞ではET-1の分解酵素であるneutral endopeptidase(NEP)が誘導されること、4.この脱落膜化間質細胞に、同様にET-1を添加した場合はAktのリン酸化は亢進しなかったこと、5.ET-1によるAktのリン酸化はendothelin type A receptorとPI3Kを介していること、を見出している。 本年度はこれら結果に基づき実験をすすめ以下の結果を得た。ET-1を含む子宮内膜上皮細胞の培養上清を内膜間質細胞に作用させたところ、細胞増殖シグナルであるAktのリン酸化とDNA合成の促進が誘導された。この変化は、endothelin type A receptorのブロッカーで部分的に抑制された。またNEPの誘導された脱落膜化間質細胞ではET-1によるAktリン酸化およびDNA合成は50%ほどに抑制されたが、この変化はNEPのインヒビターで抑制された。以上の結果より、子宮内膜上皮細胞が産生するET-1はパラクライン的に間質細胞に作用するが、この作用は間質細胞に発現するNEPにより調整されていることが確認できた。これら結果は、子宮内膜の周期的変化において上皮-間質間の相互作用が必要であることを示唆している。
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