平成17〜18年度までの研究により、1)子宮内膜間質細胞にET-1もしくは内膜上皮細胞培養上清を添加するとAktのリン酸化とDNA合成能が亢進し、この作用はendothelin type Areceptor blockerとPI3Kインヒビターで抑制されること。2)ET-1の分解酵素であるneutral endopeptidase(NEP)が誘導された脱落膜化間質細胞に、同様にET-1または内膜上皮細胞培養上清を添加した場合はAktのリン酸化とDNA合成能は亢進しなかったこと。を見出している。これらの結果は、子宮内膜上皮細胞が産生するET-lはパラクライン的に間質細胞に作用するが、この作用は間質細胞に発現するNEPにより調整されていることを示し、子宮内膜の周期的変化において上皮-間質間の相互作用が必要であることを示唆している。 本年度は、この上皮-間質間の協調に着目し、ET-1産生酵素であるendothelin-converting enzme-1(ECE-1)とET-1分解酵素であるNEPの子宮内膜での時間的・空間的発現変化を解析するために、手術によって得られた正常子宮内膜検体を用い、免疫組織染色法、ウェスタンブロッテイング法およびRT-PCR法にてECE-1とNEPの発現を検討した。ECE-1は主に子宮内膜上皮で発現しており増殖期に発現が多いのに対し、NEPは間質細胞で発現し月経周期を通して発現していたが、特に分泌期に発現が多い傾向がみられた。増殖期には上皮細胞より産生されたET-1が間質細胞の増殖を促し、分泌期にはET-1の産生そのものが抑制されるとともに、間質細胞のNEPでET-1の分解が促進され、増殖作用を抑制する機序が推測され、ET-1を介した上皮-内膜間協調作用が子宮内膜の周期変化形成に必要であることが示唆された。
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