研究概要 |
我々はまず、婦人科良性疾患手術時に腹水、末梢血の他、腹膜組織、子宮内膜等の組織を採取した。症例を子宮内膜症症例、不妊症例、月経各周期(増殖期、排卵期、分泌期中期、分泌期後期、月経期)に分類し保存した。腹水中Fractalkine(FRK)濃度を解析した結果、腹腔内におけるFRKの産生源として腹水細胞や腹膜が考えられ、腹腔内のFRK濃度は子宮内膜症症例において有意に低下していることを報告した(Int J Gynecol Obstet 91:36-41,2005)。末梢血中のFRK濃度と子宮内膜症との関連は見出せなかった。FRKが精子運動能と遊走能を有することを我々はすでに報告しており(Hum Reprod 2004)、FRKが子宮内膜症症例における妊孕能低下に関与していることが示唆された。 次に、子宮内膜におけるFRKの解析を行なった結果、FRKは内膜上皮細胞と腺細胞に局在を認め、FRKのレセプターであるCX3CR1は腺細胞に存在していた。月経各周期別に解析したところ、FRKの転写レベル蛋白レベルでの発現産生は、増殖期と比べて分泌期で有意に高かった。(Int J Gynecol Obstet in press:2006)FRKは子宮内膜における受精着床に関与する可能性があると考えられる。これらの知見は現在有効な治療方法のない原因不明の妊孕能低下症例、受精着床環境不良症例の病態解明につながるが、さらに、酸化ストレスが及ぼす影響について検討予定である。
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