本研究の目的は卵巣癌におけるCancer Stem Cellの存在を同定することである。本年度はCancer Stem Cellの濃縮方法の開発を主に行った。 1.Hoechst33342染色によるCancer Stem Cellの濃縮(Side Population法) 卵巣癌細胞株6種類ならびに子宮体癌細胞株3種類について解析を行った。Hoechst33342濃度、反応時間の検討により至適条件を同定した。その結果、卵巣癌細胞株1種類、子宮体癌1種類にSide Population群(SP細胞)が含まれることが明らかとなった。 2.選択的培地ならびにゲル包埋によるCancer Stem Cellの濃縮 通常のウシ胎児血清添加培養液では、分化が誘導され未分化細胞の維持増殖は困難である。 無血清培地にサイトカインを添加し、さらにゲル内で細胞を培養した結果、未分化細胞増殖形態の特徴であるスフェロイド形成が高効率に見られた。 3.Cancer Stem Cell候補細胞群の免疫不全マウスへの移植(造腫瘍能、分化能の解析) Cancer Stem Cellの定義はin vivoにおける造腫瘍能と分化能を有することである。そこで我々は卵巣癌細胞株1種類につきSide Population法を行い、セルソーターによってSP細胞ならびにnon-SP細胞を分取し、重症免疫不全マウスであるNOD-SCIDマウスに皮下移植を行った。10^6個を移植した場合、SP、non-SPともに腫瘍が形成されたが、SP細胞移植群の方で局所浸潤が著しく、なおかつ元々の組織型に類似した分化形態を示す腫瘍が形成された。
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