研究概要 |
昨年度より検討したCSCの濃縮方法として(1)表面抗原ならびに(2)選択培地による選択を行い、CSCのin vivoにおける造腫瘍能、分化能の検討ならびにその性状解析を行った。 1.CD34表面抗原によるCSC候補細胞選択とその性状 卵巣癌細胞株6種類について解析を行い、卵巣癌細胞株SKOV3細胞にCD34陽性細胞群(2-6%)が存在することを明らかにした。CD34陽性、陰性細胞をそれぞれヌードマウスに移植したところ(N=4)、腫瘍形成能に差は見られなかった。ところが興味深いことに、CD34陰性細胞を移植した組織像は分化不良な充実性増殖であったが、CD34陽性細胞を移植した群では腺管構造が多く見られる高分化腺癌を形成し、CD34陽性細胞が分化能を有することが明らかになった。また抗がん剤感受性(Paclitaxel, Adriamycin, CBDCA)を比較したところ、CD34陽性細胞がいずれの抗がん剤にも抵抗性を示した。現在両細胞間でのマイクロアレイ解析を提出中である。また実際の卵巣癌手術検体から癌細胞を分離し、CD34ならびにCD133表面抗原による選択を行い造腫瘍能、分化能を検討する予定である。 2.選択培地ならびにゲル包埋によるCSCの濃縮 通常のウシ胎児血清添加培養液では、分化が誘導され未分化細胞の維持増殖は困難である。無血清培地に様々なfactorの組み合わせを検討した結果、IL-6とSCF(Stem Cell Factor)を添加し、ゲル内で細胞を培養した結果、未分化細胞増殖形態の特徴であるスフェロイドが高効率に見られた。1例の卵巣癌手術検体から癌細胞分離後、上記の選択的培地(vsウシ胎児血清添加)とゲル包埋で2週間培養後、ヌードマウス(N=2)に移植し観察中であるが、平成19年3月1日現在(移植後4週間)IL-6+SCF添加無血清培地群のみに腫瘍の形成が観察できている。
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