研究概要 |
ヘプシンはセリンプロテアーゼの1種類であり、正常肝臓・腎臓に多く存在し、前立腺、肺においても若干ではあるが含まれている1.85キロダルトンの蛋白である。我々専門分野である婦人科において、1997年谷本らはCancer researchで正常卵巣は発現せず、境界型悪性、卵巣癌に高発現することを発表し、その後2001年にもNatureにおいて、前立腺癌でも同様に癌化することでヘプシンが発現することが述べられる。しかしながらそのヘプシンにおける機能等のいまだ詳細はわかっておらず、そこで我々は卵巣癌細胞株を用いて、hepsin cDNAの遺伝子導入を行い、メカニズム解明を行った。その結果p53を介し、p53のdown-streamであるPuma,Noxa,p53AIP1,Bax,Bak,p53R2に作用し、アポトーシスに関連しているCaspase-3、6、7に働き、in vitroだけでなく、in vivoにおいても癌抑制することを突き止めた(Int.J.Oncol.28:393-398,2006.)。そこで今回、研究課題としてp53,RB癌抑制遺伝子に大いに関わっている子宮頚癌について研究を行なったが数個の子宮頚癌細胞株を用いるも、ヘプシン導入細胞株樹立できず、やむなく子宮頚癌細胞株から子宮体癌細胞株に変更を行い、実験を行った。 子宮体癌は近年増加傾向である悪性腫瘍の1つであり、子宮体癌の代表株とされるIshikawa細胞株を用い、ヘプシンの遺伝子導入を試み、ヘプシン機能解明ならびに公腫瘍効果検討を待った。その結果、ヘプシン導入細胞株(Ishikawa/hepsin-10・Ishikawa/hepsin-12)はEmpty vectorと比較し、p53・14-3-3sigmaを介し、G2-M期でGrowth Arrestを認めるとともにCyclinA,Bを抑制し、Bak、Bcl-XL、Bcl-2、Caspase-3等のアポトーシスに機序し、in vitro、in vivoにおいても癌抑制が認められた。この事よりヘプシンは子宮体癌に有効な癌抑制遺伝子であり、現在Molecular Cancer TherapeuticsにIn press中である。
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