本研究者はこれまでにCGH(comparative genomic hybridization)法を用いて100例の子宮内膜癌における染色体異常領域を解析した。この結果、8番、9番、11番、X染色体上の遺伝子コピー数変化と種々の病理学的パラメーター(筋層浸潤の程度、付属器病変、腹水中悪性細胞出現、リンパ節転移など)に相関を認めた。すなわち、これらのコピー数変化は、がん細胞の浸潤・転移などの悪性度を予測させる因子になりうることが示唆された。また多変量解析をおこなったところ、手術進行期とならんで11番染色体(11q23)の遺伝子コピー数減少が、生命予後に強く影響することが明らかとなった。一方で組織分化度は独立した予後因子ではなかったことから、この11q23の遺伝子コピー数変化は組織分化度よりもはるかに予後予測に有用であることが明らかとなった。またこの11q23の遺伝子コピー数変化と染色体不安定性の問に有意な相関も認めた。 続いて、この染色体領域に存在する遺伝子を同定するため、全染色体領域を網羅するArray CGH用DNAチップを作製した。Array CGHが良好な再現性をもって解析データが得られるよう種々の条件設定を行った。このArray CGHから得られた結果から、いくつかの候補遺伝子領域が明らかとなった。現在FISH(fluorescence in situ hibridization)法にて、候補遺伝子における遺伝子コピー数の変化を確認しているところである。
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