非古典的HLAクラスI(HLAクラスIb)であるHLA-E、-F、-Gのうち、HLA-Gは、胎盤絨毛外栄養膜細胞(EVT)に強く発現し、妊娠免疫に重要な分子であると推測されている。我々は、DE.Geraghtyらが作製した抗HLA-E、抗HLA-F、抗HLA-G抗体を用いた免疫染色により、後期胎盤EVTにHLA-E、-F、-G分子が揃って強く発現していることを見出してきた(J Immunol.;171(3):1376-84.2003.)。 今回は、HLA-Fがどの胎生期に発現してくるのかを調べるため、正常胎盤妊娠全期における発現を、HLA-E、-G分子も含め検討した。その結果、HLA-Gは妊娠全期を通じ、EVTに発現していたが、HLA-Fおよび-Eは、妊娠後期に向かい、強く発現する傾向がみられた。次に妊娠高血圧症候群胎盤におけるHLA-E、-F、-Gの発現を調べたが、妊娠高血圧症候群胎盤EVTにおけるHLA-E、-F、-Gの発現は、正常胎盤とほぼ同程度に発現しており、妊娠高血圧症候群発症に、これらの分子の直接的な関与は見出せなかった(J Reprod Immunol. in press)。 また、HLA-E、-F、-Gの機能を調べる動物モデルを検討するため、カニクイザルにおけるこれら分子の発現を調べたところ、カニクイザル胎盤に、HLA-Fホモログ、HLA-Gホモログが存在することが明らかとなった(submitted)。HLA-EはNKレセプターを介し、HLA-Gは抑制性レセプターを介し、NK細胞活性を調節することが知られているが、HLA-Fはいまだその機能は明らかになっていない。妊娠中期から後期に、HLA-E、-F分子の発現が強くなることが、妊娠免疫にどのような影響を与えているのかは現時点では不明であり、今後、検討を行う予定である。
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