申請研究の目的は、抗癌剤による卵巣機能障害の分子機構を解明することでより効率的な予防方法の確立、偽閉経療法による予防法の至適投与条件確立、卵巣機能障害を直接的に測定する簡易アッセイ系の樹立、である。 (1)抗癌剤治療を受けた正常卵巣の臨床病理組織学的研究:抗癌剤を術前投与された40歳以下子宮癌・卵巣癌患者の正常卵巣組織を病理組織学的に詳細に検討した結果、抗癌剤の種類による卵巣障害の差異を明らかにした。(論文執筆中) (2)動物実験による抗癌剤誘発卵巣顆粒膜細胞傷害の証明とその分子機序の解明:(1)分子スクリーニング:CPT-11誘発卵巣顆粒膜細胞傷害時関連分子候補をあげる。既に2分子を同定した。(2)既に予備実験で関与が明白になっているBcl-2 family分子やp53 family分子を再確定した。CPT-11刺激マウス卵巣組織を用いた確認実験も行った。(3)CPT-11以外の卵巣障害性抗癌剤についても、CPT-11と同様の卵巣顆粒膜細胞傷害時の関連分子の同定を行った。(4)遺伝子改変マウスを用いたCPT-11誘発卵巣顆粒膜細胞傷害機序の解析:個体レベルでの検証実験を行っている。現在、最終確認段階にある。 (3)動物実験による抗癌剤誘発卵巣顆粒膜細胞傷害の予防法の確立:(1)偽閉経療法の至適投与条件の決定実験:マウスを用いてCPT-11投与時の卵巣顆粒膜細胞アポトーシスを最大限予防できるGnRHa製剤の投与量、投与回数、投与時期を決定した。(2)マウス抗癌剤誘発卵巣細胞傷害へのエストロゲン刺激療法による予防効果の検証:応用性が低いと判断し、計画を中止した。(3)偽閉経療法による抗癌剤誘発卵巣細胞傷害の予防時における、卵巣機能障害関連分子の発現の検討:すでに中心的分子を同定した。論文執筆中。 (4)マウス卵巣器官培養による卵巣細胞傷害実験システムの確立:マウス卵巣器官培養系を用いて、各種薬剤の卵巣細胞傷害を検証する一般的な卵巣細胞傷害測定系を確立した。
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