研究概要 |
【目的・方法】 子宮体癌の発癌過程における癌関連遺伝子のDNA異常メチル化について明らかとするため、当院にて診断および治療目的で採取された子宮内膜細胞診検体(正常子宮内膜27例、子宮内膜異型増殖症14例、子宮体癌52例)合計93例を対象に、同意を得たうえで、hMLH1、E-cadherin、APC、CHFR、RAR-β、p16の6種の遺伝子のDNA異常メチル化を特異的PCR(MSP)法で解析した。また、癌関連遺伝子DNA異常メチル化と発現低下との関連について、免疫組織化学的に解析した。さらに、遺伝子の異常メチル化と臨床病理学的因子との相関について検討した。 【結果】 1.hMLH1遺伝子の異常メチル化は、子宮内膜異型増殖症で14.3%、子宮体癌において40.4%と最も高頻度に生じており、癌化の早期に生じる現象と考えられた。 2.E-cadherin遺伝子の異常メチル化は、子宮体癌の14.0%に認められるが、子宮内膜異型増殖症には認められないことから、癌化の早期には関与しない現象と考えられた。 3.hMLH1およびE-cadherin遺伝子に異常メチル化が認められた症例は、有意にタンパク発現が低下していた(hMLH1:p<0.01 E-cadherin:p<0.05)。 4.CHFR遺伝子の異常メチル化は有意に低分化型腺癌(G3)に多かった(p<0.05)。 【まとめ】 子宮内膜の発癌過程において,正常内膜には認められない癌関連遺伝子の異常メチル化が生じていた。その中でもhMLH1遺伝子のメチル化異常が最も高頻度で、子宮体癌の初期病変である子宮内膜異型増殖症においても認められたことから、hMLH1遺伝子のメチル化が子宮体癌の発癌の早期に関与する重要なイベントであると示唆された。
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