目的:StAMP (Steroidogenic acidic mitochondrial protein)は、成体においてステロイドホルモン産生組織(副腎・精巣・卵巣)に発現しており、その組織内分布が核内レセプター型の転写因子であるSF-1に一致している。またSF-1は、ノックアウトマウスの成績から副腎・性腺の発生分化に不可欠の因子であることが明らかになっている。以上より、StAMPが性腺の発生分化に関与している可能性が考えられる。今年度の研究では、胎仔・新生仔期性腺におけるStAMPの発現変化をSF-1の発現と比較検討することを目的とした。 方法:胎生12.5〜18.5日および出生後0〜21日の雌雄のマウスより各性腺を採取し、リアルタイムRT-PCR法によりStAMP、SF-1 mRNAの発現について定量的に検討した。また、抗StAMP、抗SF-1抗体を用いた免疫組織化学染色により、各時期の性腺における組織内局在を検討した。 成績:胎仔・新生仔期におけるStAMP mRNAの発現量は、卵巣に比して精巣において高く発育に伴い漸増し、マウスの性成熟が開始される出生後21日目には、胎生12.5日目の約10倍の発現量を認めた。この発現変化は、SF-1 mRNAの発現と概ね同様の傾向を示した。組織内局在については、精巣では初期の間質細胞に、さらに分化の過程でleydig細胞に発現を認め、卵巣では主に出生後の莢膜細胞層にそれぞれ発現を認め、SF-1蛋白発現と類似した傾向を示した。 結論:胎仔・新生仔期の性腺において、StAMPは卵巣に比べ精巣においてより強い発現を示した。その発現傾向は、性依存性の発現変化を認めるSF-1と類似していた。このことから、性腺分化におけるSF-1の機能発現に、StAMPの共在が必須である可能性が示唆された。
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