子宮内膜での局所因子は蛋白の前駆体として合成され、前駆体蛋白活性化酵素により、活性化さ乳機能を発揮していると推測されている。そこでヒト子宮内膜における前駆体蛋白活性化酵素の一つであるproprotein convertase 6(PC6)の解析を目的とした。まずヒト子宮内膜組織を用いて抗PC6ポリクローナル抗体を用い免疫組織化学反応を行い月経周期や妊娠の各時期別に光学顕微鏡にて詳細に形態学的に評価した。PC6蛋白の発現は増殖期で子宮内膜腺細胞に認められ、間質細胞では発現を確認することはできなかった。一方、分泌期では、腺細胞より間質細胞でその発現を強く認めた。妊娠初期脱落膜において間質細胞で強くPC6蛋白の発現を認めた。さらに、脱落膜化におけるPC6の動態変化を明らかにするために、ヒト子宮内膜組織は、機械的および酵素的に融解して、比重遠心法、付着細胞培養法で子宮内膜間質細胞を分離培養した。エストロゲン(E)やプロゲステロン(P)を添加して培養し、脱落膜化のマーカーであるプロラクチンの発現を確認した。この脱落膜化が確認された細胞からmRNAを抽出し、mRNAを抽出しPC6 mRNAの発現動態をreal-time PCRを用いて検討を行った。培養9日目以降にE単独群に比べEP群で有意に増加を認めた。さらにmorpholino antisense oligonucleotides(MOs)によりPC6のノックダウン(発現抑制)による脱落膜化への影響を検討した。PC6に対するMOsの添加培養により、脱落膜化のマーカーであるPRLの分泌が有意に抑制された。今回の検討により、Pにより誘導されるPC6は、ヒト子宮内膜間質細胞の脱落膜化とともに発現が増加し、さらにその発現は脱落膜化に必要であることが判明した。
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