フッ化ピリミジン系抗癌剤である5-FUは頭頸部癌において、術前あるは術後の補助療法として、また進行癌で手術不能な症例に対しては第一選択の治療法としてシスプラチンと併用される。また、5-FUの経口剤は術後の再発防止のため長期に投与される。5-FU不活化酵素であるDihydroPyrimidine Dehydrogenase(DPD)、主要な代謝酵素であるOrotate Phosphoribosyl Transferase(OPRT)、5-FUの標的酵素であるThymidylate Synthase(TS)はいずれも5-FUの抗腫瘍効果を予測する指標として期待されており、これら酵素の発現量を考慮したオーダーメイド治療の可能性も考えられる。 平成18年度は5-FU感受性因子であるDPD、TS、OPRTの発現量をDPD、TS、OPRTのcDNA配列をデータベースから入手し、RT-PCRおよびリアルタイムPCR用のプライマー、プローブを設計し、これを用いて頭頸部癌症例の手術や生検により得られた検体のDPD、TS、OPRTのmRNA発現レベルを測定した。また、同一検体のDPD、TS、OPRTの酵素活性をラジオアッセイ法により測定した。下咽頭癌3例、耳下腺癌2例、計6標本でDPD、TS、OPRTのmRNA発現レベルと蛋白酵素活性レベルの相関を検討したが、いずれの分子でも有意な相関関係を認めなかった。標本数が少ないこと、蛋白分子のターンオーバーの違いなどの問題などが考えられ、追加検討が必要と考えられた。
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