糖尿病の合併症の一つに難聴が知られている。一部に数種のミトコンドリア遺伝子変異が関与していることが明らかになってきているが、多くは、障害部位、障害原因とも明らかではない。一方、肥満・過食・高インスリン血症など顕著な糖尿病症状を自然発生する突然変異の糖尿病モデルマウスがジャクソン研究所で発見され、糖尿病およびその合併症の発症機構の解析究明に汎用されている。C57BKS.Cg-m+/+Lepr^<db>を交配して、C57BKS.Cg+Lepr^<db>/+Lepr^<db>、C57BKS.Cg-m+/+Lepr^<db>、およびC57BKS.Cg-m+/m+を得る。この三者は体毛の色、体重増加から鑑別できる。上記3系統の個体を使用し、歪成分耳音響放射を計測した結果、ホモ接合体(BKS.Cg-+Lepr^<db>/+Lepr^<db>/Jc1)がヘテロ接合体(BKS.Cg-m+/+Lepr^<db>/Jc1)、野生接合体BKS.Cg-m+/m+/Jc1)に比べ、生後早期から閾値が上昇することを確認した。電気生理学的に解析の終わったマウスは腹腔内に多量のネンブタールを投与し安楽死させた後、ホルマリンで全身還流固定し、全身臓器を摘出した後、内耳はEDTAを用い脱灰しパラフィンで包埋して厚さ8μmの標本とした。そしてH-E染色を行いオリンパス社製光学顕微鏡にて観察した。このパラフィン切片では、ホモ接合体、ヘテロ接合体、野生接合体の間に明らかな形態的差異を認めなかった。免疫染色では生後12日目のC3H/HeJでは、内耳有毛細胞においてLeprの弱い発現が認められた。
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