糖尿病の合併症の一つに難聴が知られている。一部にミトコンドリア遺伝子変異が関与していることが明らかになってきているが、多くは、障害部位、障害原因とも明らかではない。一方、肥満・過食・高インスリン血症など顕著な糖尿病症状を自然発生する突然変異の糖尿病モデルマウス(db/db)がジャクソン研究所で発見され、糖尿病およびその合併症の発症機構の解析究明に汎用されている。我々は、db/dbが難聴を発症し、そのホモ接合体はヘテロ接合体、野生型に比べ早期にABR閾値が上昇することを確認した。さらにDPOAEでもホモ接合体は早期からDPレベルの低下を認めた。このため、難聴の主因は蝸牛血管条障害であると予想したが、光学顕微鏡では有意な血管条障害やラセン神経節細胞の脱落は認めなかった。しかしながらレプチン受容体の内耳発現を確認するためにC3H/HeJのコルチ器を免疫染色したところ、外有毛細胞の不動毛において発現が見られた他、neonateの動毛において強い発現を認めた。これらの結果より、これらのマウスにおける聴覚閾値の上昇は、外有毛細胞の何らかの障害を含めた複数の機序が関与しているものと想定している。
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