研究概要 |
(目的)近年、アレルギー疾患の保有率が上昇し、安全で効果の高い治療法を確立することが期待されている。最近では、感染症罹患率の低下による免疫恒常性の不均衡がアレルギー疾患の保有率の上昇に関連すると示唆されている。そこで、PAMPsを認識するTLRsがアレルギーの発症に関わっていると推測し、申請研究の予備実験として、今年度は、TLR9のリガンドであるCpG DNAの経口的ワクチンとしての有用性をヒト口蓋扁桃由来の細胞を用いて検討した。 (方法)手術前に同意が得られた患者の摘出口蓋扁桃より単核細胞を分離し、CD40/IL-4添加IgE産生環境下においてA type及びB type CpG DNAでそれぞれ刺激し、総IgEの産生、各種サイトカインの産生、Foxp3,T-bet, GATA3の発現、およびCD4^+CD25^+細胞の陽性率を検討した。また、BDCA2抗体を添加することによりCpG DNAによるpDCの活性化を抑制した状態で同様の実験を行った。 (成績)ヒト扁桃由来単核細胞において、CD40/IL-4刺激によるIgE産生抑制作用は、B typeよりも、A type CpG DNAに強く認められた。このA typeの作用はBDCA2抗体添加により消失した。同様に、摘出口蓋扁桃のpDCを解析したところ、A typeに反応してTh1サイトカインを産生していた。また、A type刺激によりT-betの発現が著明に亢進していた。一方、CpG DNAによるFoxp3の発現は、B typeによりわずかに誘導されるにとどまった。実際に、A typeはCD40/IL-4によるCD4^+CD25^+Tregの増加を抑制し、B type CpG DNAはさらに増加させることが確認できた。 (結論)ヒト口蓋扁桃由来単核細胞におけるIgE産生抑制には、A type CpG DNAによるpDCを介したTh1誘導機構の関与が推測された。これらのことから、A type CpG DNAのアレルギーの経口的ワクチンとしての有用性が示唆された。 次年度は、実際にマウスを用いて、CpG DNAのアレルギー疾患発症との関与を検討する予定である。
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