研究概要 |
(1)分子生物学的手法による薬剤耐性菌の検出 中耳炎患児鼻咽腔より検出された肺炎球菌およびインフルエンザ菌についてPCR法によるPBP遺伝子変異の検索と薬剤耐性の経時的変化について検討した。肺炎球菌866株中では210株(24.3%)でPBP遺伝子に変異は認められなかった。一方、333株(38.5%)でpbp1a、pbp2x、pbp2bの3遺伝子において変異が認められた。セフェム系抗菌薬に対する耐性化に関与するpbp2x変異株は620(94.5%)株で認められた。経時的変化では、3遺伝子変異株が徐々に増加の傾向を認めた。一方インフルエンザ菌については、644株中βラクタマーゼ産生株は16株(2.5%)検出されただけであったが、pbp3変異株は279株(43.3%)に認められた。薬剤感受性株の急激な減少に伴いpbp3遺伝子変異株の急増が認められている。 (2)分子生物学的手法による血清型分類 64株の急性中耳炎患児由来肺炎球菌の血清型分類をmultiplex PCR法により行った。本法により対象肺炎球菌の76.6%の血清型判別を一度に行うことが可能であった。19型が36.0%と最も多く、23型(15.7%),6型(15.6%)と続いた。現在では、さらにインフルエンザ菌について無莢膜型と莢膜型の判別をmultiplex PCR法により行っている。 (3)分子生物学的手法によるウイルスおよびマイコプラズマ、クラミジア感染の検索 中耳貯留液検索の準備研究として咽頭拭い液を対象にPCR法による検索を行った。RSウイルス4.6%、ヒトメタニューモウイルス4.7%、インフルエンザウイルス0%、アデノイウルス6.7%、マイコプラズマ0%、クラミジアニューモニア0%の検出率であり、咽頭拭い液からの検出率は低いものであった。 以上の結果についてはすでに論文として発表あるいは執筆準備中である。
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