扁桃中のIgAのサブクラスの比の違いを検討した。ジャカリンというレクチンを用いてIgAをIgA1とIgA2に分けて、慢性扁桃炎のみのコントロール群とIgA腎症の群にわけてIgA1/2比を検討した。コントロール群に比較してIgA腎症群ではその比に有意差を認め高値を示した。また、扁桃では産生されたIgAは血中に流れると考えられるが、血中のIgA1/2比と異なり唾液や喀痰といった外分泌液と同等のIgA1/2比であった。IgA腎症患者では、扁桃でのIgAの産生メカニズムになんらかの異常が示唆された。 さらに、既に作成した15merの合成ヒンジペプチド(VPSTPPTPSPSTPPT)に対する抗体(ASHPA Anti synthetic IgA1 hinge peptide antibody)による反応性を検討した。検体としては健常者血清、扁桃抽出液を用いた。そのとき、血清をシアリダーゼ、シアリダーゼとガラクトシダーゼ、シアリダーゼとO-グリカナーゼなどで処理しムチン型糖鎖の人工糖鎖改変分子を作成、SDS-PAGEとASHPAを使用したウエスタンブロット法により反応強度を比較した。結果としては、糖鎖が少ないものほどASHPAの反応性が高いことを証明できた。扁桃抽出液を用いてASHPAに対する反応性を検討すると血清と比べ明らかに反応性が高かった。しかし、コントロール群とIgA腎症群に差を認めなかった。これは、以前に報告したように扁桃で産生されるIgAは糖鎖が不全なタイプが多いという結果に一致している。 IgA腎症では糖鎖不全型IgAが作られていることは間違いなさそうであり、その産生が過剰になっている可能性がある。扁桃は一般に様々な炎症の場であり、炎症の結果産生が亢進していることが考えられる。今後、扁桃での産生過剰のメカニズムを解明するためサイトカインの検討を行う予定である。
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