今回既存の直達内視鏡に光源として今回作成した赤外線装置を用いて、ヒトの鼓膜を経由して鼓室内の透見実験を行った。赤外線発光装置の光源はwavelength 789.8nmを用いた。 結果は正常鼓膜では鼓室内が十分ではないものの透見出来たが、個体差があり透見出来ない鼓膜も認めた。この問題点として、赤外線が鼓膜を十分に透過出来ない場合、もしくは鼓膜面での赤外線の反射波と、鼓膜を透過し鼓室粘膜を反射し再度鼓膜を透過してくる反射波が、内視鏡で像として見るとき干渉し減弱する場合の可能性があることが考察された。 そこで、モルモットの鼓膜を深麻酔下にて摘出し、ヒトの外耳道に近似させた筒状の装置を作成した。その底面に摘出鼓膜を張り、赤外線分光器にて透過率を測定した。結果は鼓膜面での反射率が高く、鼓膜で約80%程度の反射を認めたため鼓室へ透過できる赤外線は約20%と推定された。さらにこの透過した約20%の赤外線が鼓室の粘膜を反射し再度鼓膜を透過する率は、入力赤外線量の3-4%まで減衰すると推定された。 さらに干渉波について、入力赤外線の鼓膜に対して一定の透過・反射波があるか検討を行った。これは特定の反射波が検出された場合、その逆位相波を入力することにより相殺され、鼓室からの反射波が再度鼓膜を透過する赤外線をより検出することが出来る可能性があるからである。実験はモルモットの鼓膜を上記同様に摘出しその鼓膜に赤外線を照射して、その透過・反射波をフィルターに通して特徴的な波長を選択的に検出出来るか試みた。使用したフィルターは740-840nm band-pass filterを用い、赤外線分光器にて測定した。結果は入力赤外線に対して鼓膜面に特徴的な透過・反射波は測定されず、赤外線を用いて鼓室の透見像をクリアに観察することは難しい事が示唆された。
|