本年度は、主として実験手技の習得ならびに基礎実験を行った。まず正常マウスを用いて、本申請により購入したマウス用人工呼吸器による人工換気下に内リンパ直流電位(EP)の測定を行い、約+90mVの電位と人工呼吸器停止による無呼吸負荷に伴うEPの低下を確認した。また、内リンパ液のイオン濃度についても測定を行い、内リンパ液のNa^+濃度([Na]_e)が1-2mM程度、Ca^<2+>濃度([Ca]_e)は10^<-6>M以下と、ほぼモルモットと同様の結果を得た。クローディン11ノックアウトマウス(Cld11^<-/->マウス)を用いた実験では、人工換気下でEPは+20mV程度であり、無呼吸負荷によりEPは-10数mVまで低下した。したがって、Cld11^<-/->マウスにおいても正のEPが30mV以上発生していることから、少なくとも一部は血管条辺縁細胞がEPの発生に関与している可能性が示唆された。また内リンパ液のイオン濃度に関しては、[Na]_eは2mM程度と正常マウスと比べてほとんど変化していなかったが、[Ca]_eは10^<-4>M程度に上昇していることが判明した。したがって、モルモットを用いた以前の検討と同様にEPと[Ca]_eは密接に関与しており、EPの低下により細胞外液からCa^<2+>が内リンパ腔に流入する事で[Ca]_eが上昇しているものと考えられた。現在は基本的な手技に加え、外リンパ潅流の手技を習得するため正常ラットを用いて実験を行っている。これに加え、申請者はモルモットのEPに対するCa^<2+>チャネルの役割に関する研究も行っており、この結果に関しては第83回日本生理学会(群馬)において発表した。
|