「めまい・平衡障害に対する胴体回転行動を指標とした治療薬探索モデルの開発」を行うにあたり、本研究では次の2つの点、1)薬物誘発胴体回転行動を前庭神経核に対し直接・間接的に作用する薬物によって分類する、2)本行動におけるベンゾジアゼピン系薬物による抑制効果とニューロステロイドによる作用増強効果について検討する、を目標としている。現在、1)2)について同時検討中であり、一部その研究成果として日本めまい平衡医学会雑誌であるJapanese Journal of Equilibrium Researchにタイトル: Endothelin-1-induced barrel rotation : no direct modulation of rat medial vestibular nucleus neurone activity by endothelin-1として、2008年2月掲載予定となった。昨年度は、特に2)を中心に基礎検討を行っており、薬物誘発胴体回転行動におけるin vivoラットでの薬物血中濃度モニタリングのための採血や薬物投与を簡便に行う血管カニュレーション、ならびに脳室内投与を行うためのガイドカニューレ装着動物モデル作成について検討した。これにより静脈内投与、脳室内投与及び採血すべてを1匹のラットで行うことが可能となった。加えて高速液体クロマトグラフィー(HPLC:島津製作所)によるベンゾジアゼピン系薬物(ジアゼパム)の血中濃度の測定が可能となり、また採血時に伴う重大なストレスを与えることなく薬物血中濃度のモニタリングがより簡便な方法でできるようになった。このことから「めまい・平衡障害に対する胴体回転行動を指標とする治療薬探索モデル開発」の"薬物評価"に関して基礎となる部分を一部構築できたと考えている。また、パイロットスタディではあるものの、後大脳動脈付近へのエンドセリンの局所投与により胴体回転行動の回転方向に法則性があることが分かってきたことから、"めまい・平衡障害"だけでなく、椎骨脳底動脈不全あるいは椎骨脳底動脈虚血モデルへの発展の可能性を見出したものと考えている。
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