本研究は音響刺激後のRac1/ROS/RhoA経路に注目している。Rac1、RhoAはRhoGTPasesファミリーに属し、GDPが結合した不活化状態、GTPが結合した活性化状態の2つの状態が存在しpolarization、cell adhesion、cytoskeletal regulationなどで重要な働きをしている。Rac1は広く組織に存在し、NADPH oxidase複合体を形成しROS、特にスーパーオキサイドを発生する。Rho活性はRac1によって調節され、活性型Rac1はRhoを抑制する。活性型RhoAはmDia (manmalian homolog of diaphanous)の発現を促し、stress fiber形成、cell adhesionを制御する。まず、本年度は、精密な音響発生装置を用いてラットの安定した音響外傷モデルを作成した。Pirot studyとして様々な条件の音響刺激を負荷しABR閾値の変化をおった。8kHzを中心としたオクターブバンドノイズ120dBを1時間負荷(n=5)では音響暴露直後では平均100dB(8kHz)、88.6dB(20kHz)、1日後では73dB(8kHz)、75.8dB(20kHz)、3日後で68.6dB(8kHz)、70.8dB(20kHz)、7日後で60.75dB(8kHz)、70.8dB(20kHz)、14日後で58.25dB(8kHz)、56.75dB(20kHz)、21日後では57dB(8kHz)、59.75dB(20kHz)のPTS (permanent threshold shifts)モデルを示した。本実験ではこのモデルを使用しRac1/ROS/RhoA経路を検討する事とした。また、Rac1及びRhoAの活性を測定する為に蝸牛を用いたGTP Pull down assayの条件設定を行った。
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