我々は重度視力障害者の視機能を評価する光覚測定機器Low Vision Evaluator (LoVE)の開発改良を継続した。小児のフェイスカーブによくマッチングする専用ゴーグルを作成した。小児では3才以下では理解力が未熟なため評価不能なことが多かったが、およそ4才以上であれば視機能が評価可能であった。 近年、トリパンブルー(TB)色素が黄斑部手術で用いられ有効であったと報告されている。一方で、それらのヒト網膜色素上皮細胞(RPE)、網膜ガングリオン細胞(RGC)に対する毒性も報告され議論されている。今回、我々はTBのRPE、RGCに対する毒性を調べ、またそれらの低温下暴露における毒性の程度も調べた。(1)培養ARPE-19にTB(0.05%、0.2%、0.5%)を37℃と4℃下で5分または30分間暴露した。(2)培養ARPE-19とRGCにTB(0.05%、0.5%)を37℃と8℃下で1分間暴露した。細胞生存率は暴露一日後にレザズリンを用いて測定し、コントロール(BSS暴露)と比較した。(1)5分間暴露:TB0.05%の濃度では37℃下、4℃下ともに細胞生存率の低下を認めなかったが、0.2%以上の濃度では両温度下で細胞生存率の低下を認めた(P<0.01)。0.5%の濃度では37℃と4℃下での生存率の有意差を認め(P<0.01)、4℃下の生存率の方が良好であった。 30分間暴露:TB0.05%の濃度4℃以外は、どの条件下でもコントロールと比べて生存率が低下した(P<0.01)。37℃下では0.05%、0.2%、0.5%間で生存率に差を認め、濃度依存性に生存率は低下した(P<0.01)。一方、4℃下では0.2%、0.5%間で生存率に差を認めなかった。4℃下での0.2%、0.5%TB暴露は、37℃下暴露に比べて、生存率が有意に高かった(P<0.01)。 (2)ARPE-19:37℃下TB0.5%では細胞生存率は低下したが(P<0.01)、他の条件下では細胞生存率の低下は認めなかった。RGC:8℃下0.05%では細胞生存率の低下を認めなかったが、他の条件下では細胞生存率の低下を認めた(0.05%37℃;P<0.05、0.5%37℃ and 8℃;P<0.01)。 低温下暴露においては、TB色素の同様な濃度・暴露時間条件でも、その毒性は低減される可能性がある。
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