研究概要 |
初年度(平成17年度)はまず角膜血管新生の過程で浸潤してくるリンパ球について検討した。マウスを全身麻酔下で手術用顕微鏡にセットし、10-Onylon糸を角膜実質内にかけることにより角膜血管新生を誘導した。コントロール(無処置マウス)、術後3,9日後の眼球を摘出し、角膜における浸潤リンパ球に対し免疫組織化学染色を行い共焦点レーザー顕微鏡で観察した。リンパ球マーカーとしてCD4,CD25を用いた。コントロールの角膜ではいずれのリンパ球の浸潤は見られないものの、CD4陽性リンパ球は術後3日には角膜実質内に浸潤し(7.0±2.5/section)、9日目には数多くのCD4陽性リンパ球が浸潤していた(28.2±5.9/section)。CD25との二重染色を試みたところ、CD4CD25陽性細胞は術後3日目で1.1±0.6/section、9日目で9.7±40/sectionとCD4陽性細胞の中に占めるCD25陽性細胞の割合は増加していた。 次にこれらのリンパ球が角膜血管新生にどのような役割を果たしているか観察するために、CD4,CD25の中和抗体を同様のモデルにおいて、術前から一日おきに中和抗体を腹腔内に投与し、術後9日目における角膜新生血管領域の測定を試みた。新生血管領域の計測はIsolectin B4による血管内皮染色から実体蛍光顕微鏡を用いて血管新生領域を取り込み、その画像からNIH imageを用いて角膜血管新生領域をpixel数で算出することによって行った。するとCD4中和抗体投与群ではコントロール群と比較して血管新生が抑制されたのに対して、CD25中和抗体投与群では血管新生がむしろ増悪した。 以上の結果からCD25陽性リンパ球は角膜血管新生を抑制的に機能することが考えられる。
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