研究概要 |
初年度(平成17年度)でマウス角膜血管新生の過程で浸潤してくるリンパ球においてCD4陽性細胞の中に占めるCD25陽性細胞(CD4CD25陽性細胞)の割合が増加していることを確かめた。CD25陽性リンパ球は制御性T細胞と呼ばれ、様々な炎症性疾患でT細胞の機能を抑制し、炎症に対して抑制的に機能することが知られている。そのためこれらのリンパ球が角膜血管新生にどのような役割を果たしているか観察するために、CD4,CD25の中和抗体を同様のモデルにおいて、術前から一日おきに中和抗体を腹腔内に投与し、術後9日目における角膜新生血管領域の測定を試みた。するとCD4中和抗体投与群ではコントロール群と比較して血管新生が抑制されたのに対して、CD25中和抗体投与群では血管新生がむしろ増悪した。 以上の結果からCD25陽性リンパ球は角膜血管新生を抑制的に機能することが考えられたため、平成18年度ではCD25陽性細胞を投与することにより、角膜血管新生に対してどのような効果を示すか検討した。10-Onylonをマウス角膜に通糸し、角膜に十分血管の侵入したマウスの骨髄や脾臓からマグネティックビーズを用いてCD25陽性細胞を分離した。分離したCD25陽性細胞は上述した通糸処置3日後のマウスに尾静脈から静注することにより投与した。しかし、細胞条件、投与条件などさまざまな検討を行ったにも拘らず、CD25移入による角膜血管新生の抑制効果は見られなかった。CD25陽性細胞の中にもさまざまなSubsetがあることが知られており、これらについてさらに検討する必要があると考えられた。
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