アルゴンレーザーをサルの片眼の線維柱帯に照射して持続的高眼圧を生じさせた、片眼性の高眼圧緑内障モデルを作成し、各種薬剤投与時の薬理反応を、緑内障眼と対側の無処置対照眼で比較検討した。 まずカニクイザル(メス、2.6-4.8kg)9匹に対し、片眼の線維柱帯全周にアルゴンレーザーのスポット照射を数回繰り返し行い、約1年以上の長期間にわたり安定して眼圧の上昇した片眼性緑内障モデルを作成した。処置の18-42週後の眼圧の安定している時期に、血管拡張作用を持ちながら血圧下降作用は比較的弱いカルシウムチャンネル拮抗薬であるロメリジン0.01mg/kg、血管内皮由来の血管拡張因子である一酸化窒素(NO)の合成酵素の阻害薬であるL-NAME、およびNO合成の基剤であるL-arginineの各30mg/kgの静脈投与、またプロスタグランジン関連薬の抗緑内障点眼薬であるタフルプロストの点眼などを行い、投与前後の視神経乳頭(ONH)の組織循環をレーザースペックル法により非侵襲的に解析した。ロメリジン投与後、緑内障モデル眼ではONH血流の約6%の有意な上昇を、対側無処置眼では約11%の有意な上昇を認めたが両眼のあいだには有意差はなかった。L-NAME投与後には無処置眼でのみONH血流の約7%の有意な低下を認め、L-arginineの投与後には両眼で約6%の同様の増加を認めた。タフルプロストの点眼後、両眼のONH血流は両眼同様に約15%増加した。 このように各種薬剤投与時の眼局所組織血流の変化には、緑内障モデル眼と無処置対照眼とのあいだでしばしば有意な相違が見られた。
|