研究概要 |
目的:ぶどう膜炎の動物モデルであるマウス実験的自己免疫ぶどう膜炎モデル(以下、EAUと略す)おいて、Th1細胞の眼内浸潤が炎症惹起に中心的役割を果たす事が知られている。本研究は、マウスEAUにおける、Th1関連ケモカイン受容体(CXCR3,CCR5)の意義を明らかにする事を目的として、CCR5とCXCR3を共に欠失するダブルノックアウトマウス(DKO)を用いて、EAUの重症度を野生株マウス(WT)と比較した。 方法:ヒト網膜内蛋白の合成ペプチド(IRBPp)200μgをWTマウス、DKOマウスに免疫してEAUを惹起させた。免疫後22日目にマウスの眼底を観察してEAUの重症度を臨床的、病理組織学的に検討した。同時に、マウスの頚部リンパ節と脾臓よりリンパ球を採取し、IRBPp刺激下で培養して、増殖反応の強さと産生されるサイトカイン濃度を調べた。 結果:WTマウス、DKOマウスの免疫後22日目の臨床的EAUスコアは、0.85±0.97、2.94±1.56であり、DKOマウスで有意に高度であった(p<0.01)。病理学的EAUスコアも各々0.88±1.23、2.65±1.80で、DKOマウスで有意に強く、眼内への顆粒球の浸潤がより強い事が観察された。リンパ球増殖試験では、脾臓・頚部リンパ節細胞ともに、DKOマウスでWTより強い増殖が見られた。脾臓・頚部リンパ節細胞におけるIFN-γの産生がDKOマウスで有意に亢進しており、脾臓リンパ球におけるIL-6産生もDKOマウスで亢進していた。 結論:CXCR3、CCR5両者を阻害すると、眼内へのTh1リンパ球の遊走が阻害され、頚部リンパ節と脾臓に留まるIRBPp感作リンパ球が増加していた。しかし、脾細胞におけるIL-6産生が亢進する事で、顆粒球系細胞による代償機転が働き、眼内への顆粒球浸潤の増加して、ぶどう膜炎の悪化が起きていると考えられた。
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