まず、日本人杵体一色型色覚4例におけるCNGA3、CNGB3、GNAT2遺伝子の変異をエキソンとエキソン/イントロン境界について探索した。 1例においてCNGB3のミスセンス変異(Asp633Gly)を見出し機能的解析を行った。 残る3例についてはこれらの遺伝子のプロモーター領域を解析することとし、今年度はCNGA3のプロモーターを調べた。 CNGA3の転写開始点は複数あり、報告されていた最上流エキソンの最初の塩基を+1とすると、最も上流のものは-215からであったが、-179から転写されているものが40%と最も多かったので、-179を転写開始点と決定した(以降これを+1として記載)。 段階的に欠失させたプロモーターの活性を測定したところ、-5647〜-52では変化なく、さらに9塩基削るとプロモーター活性は3倍上昇し、さらに12塩基削ると元の活性まで低下した。このことから-52〜-31に負と正の転写調節領域が並んで存在することが分った。 この領域にはNRLやCRXといった網膜特異的な転写因子が結合しうる配列が存在していたので、ゲルシフト法での競合実験を行ったが、これらの転写因子の結合配列ではないことが判明した。従ってCNGA3の発現調節を行っている転写因子は今のところ不明である。 上記3例について-446〜+325の領域について変異の探索を行ったが変異は見出されなかった。今後はCNGA3の解析と並行して、CNGB3やGNAT2のプロモーターも解析の予定である。 CNGA3の既報の変異39種類とCNGB3の既報の変異1種類はそれぞれcDNAに導入し発現ベクターに繋ぎ電気生理学的に機能解析を行った。cGMPに対する感受性を上げる変異や、逆に下げる変異を見出したので、現在論文にまとめつつあるところである。 最近報告された14種の変異(CNGA3が6種、CNGB3が8種)もcDNAに導入し発現ベクターに繋いだところであり、順次解析の予定である。 新たに日本人杵体一色型色覚2例のゲノムDNAを得たので、現在変異探索を進めているところである。
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