本年度の研究成果 本年は研究期間の最終年度に該当するため、実験の総まとめ及び論文作成を中心に行った。 具体的には、これまでの基礎データを基に全身麻酔下でのマウス網膜の電気生理学的変化を研究するためのERG記録の実験系を確立し、正常マウスを用いた正常データベースの集積を行った。次いで、眼球内に薬物注入を行い網膜変性症や緑内障発症モデルを作成し、これらの眼障害モデルでは正常とどのような差異を生じているのかを詳細に検討し、解析した。これらの研究成果の一部を、第54回日本臨床視覚電気生理学会のシンポジストとして報告した。また、その要旨を論文にまとめ報告した。以上の研究により、「明順応下ERGで、ヒトでは網膜神経節細胞由来とされたPhNRの成分がマウスではアマクリン細胞由来であること。明順応下a波には主としてOFF型双曲細胞が関与(視細胞成分ではない)していること」を発見した。また「暗順応下ERGでは、b波やOP波を含む全ての陽性波が双曲細胞より中枢側の網膜内層成分の関与によって構成されていること」を報告した。 本研究の意義と重要性 マウスは近年、実験動物として医学研究の分野で頻用され様々な疾患の病態解明や治療に重要な情報を提供している小動物となっている。眼科領域でも緑内障や網膜変性症を発症する実験モデルが作成可能となり、これらのモデル動物を用いて生体下(in vivo)で網膜の電気的挙動を研究することにより、生体における疾患罹患時の網膜の電気生理学的変化を明らかし、この結果をもとにヒトにおける眼疾患の治療開発や病態解明に有用な情報を提供しうるものと予想され、非常に重要性の高い研究と位置づけられる。
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