緑内障は失明の主要な原因であり、緑内障性視神経乳頭陥凹と呼ばれる視神経乳頭変化と、それに伴う視野異常を特徴とする疾患である。本研究では緑内障患者におけるoptineurin遺伝子変異の解析を継続し、臨床所見とのより詳細な関連を確立することを目的とした。患者群は岡山大学病院眼科の緑内障外来に通院中の広義原発開放隅角緑内障(原発開放隅角緑内障及び正常眼圧緑内障)患者とした。遺伝子解析研究に同意の得られた患者より採血を行い、10mlの末梢血から密度勾配遠心により白血球を分離、フェノール/クロロホルム抽出、エタノール沈殿によりgenomic DNAを精製した。optineurin遺伝子解析用の特異的プライマーを17セット使用して、polymerase chain reaction(PCR)法にてoptineurin遺伝子のcoding regionに相当する13か所の遺伝子断片を増幅、得られたすべてのPCR産物を、ABI PRISM BigDye Terminatr Cycle Sequencing Reaction KitとABI PRISM Genetic Analyzer 310を用いて、ダイレクトシークエンス法でforward側とreverse側から塩基配列を決定し、optineurin遺伝子変異の有無を検索した。また、患者の臨床所見として患者の性、診断時年齢、家族歴の有無、眼圧、視神経乳頭陥凹、視野狭窄の程度を調査し、それらの所見とoptineurin遺伝子変異との関連を検討した。眼圧はpacymeterを用いて中心角膜厚を測定し、大幅にずれる場合は眼圧値を補正して検定を行った。視神経乳頭陥凹に関しては、Heidelberg Retina Tomographによる撮影・定量解析のみならず、CCDカメラによるフォトスリット撮影も行い、経時的変化を追うことが可能となるよう記録した。optineurin遺伝子変異の中で、c.603T>A(Met98Lys)の頻度は健常人に比較して緑内障患者で有意に高く、また、c.412G>A(Thr34Thr)をもつ患者においては、有意な進行がみられる傾向にあった。また、中心角膜厚が薄い患者においては、有意に視野狭窄進行速度が速い傾向が見られたが、今回有意差を認めなかった。今後の課題として、中心角膜厚が薄い患者で進行しやすい傾向を認めたことより、緑内障を眼圧・視神経乳頭側からのアプローチのみならず、眼球硬性全体からみた視点からの検討が必要と思われた。
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