研究概要 |
我々は、siRNAによるウイルス結膜炎(特にアデノウイルス結膜炎)の病態解明と治療法の確立を目的として、研究を行っている。siRNAは標的遺伝子の発現を特異的に抑制するRNA分子で、生きた細胞の遺伝子発現をノックアウトする。従って、siRNAを設計するためには、ターゲットとする遺伝子の塩基配列の情報が必要である。しかし、結膜炎を引き起こす主要なアデノウイルスの血清型の塩基配列は、一部の遺伝子のみが解明されているにすぎない。そのため、重症の結膜炎や院内感染を引き起こす頻度の高い血清型である8,19,37型の全塩基配列(35,000bp)の解析を行った。結膜炎を引き起こすアデノウイルスは、変異と進化を繰り返しながら生存しており、数年おきに一定の遺伝子型が流行を引き起こしていることが証明されている。従って、8型、19型、37型の各血清型4株ずつ(標準株1株、異なる流行時期に採取された臨床分離株3株)、計12株の全塩基配列解析をオートシークエンサー(ABI PRISM 3100)を用いて解析している。相補鎖の塩基配列も解析し、誤りがないかを確認している。全ての株において、約80〜90%の解析が終了しており、現在、遺伝子多型の頻度が高い部位の解析を行い、終了する予定である。また、これまで解明できた塩基配列を利用し、臨床検体、特に院内感染を引き起こしたアデノウイルス株の同定と解析を行った。この内容は、学会にて発表し、学会誌に論文報告した。全12株の全塩基配列決定後、血清型間や株間の相同性を検討する。そして、アデノウイルス全遺伝子についてsiRNAを設計し、抗アデノウイルス効果を検討し、最も効果の高いsiRNAを、臨床使用へ向けて検討する予定である。
|