本研究で我々は眼表面上皮細胞で優位に発現しているp63のアイソフォームがΔNp63αであること、その発現は角膜上皮細胞の幹細胞が存在するとされている輪部と結膜上皮の基底層から中間層にかけてであることを見いだした。ΔNp63は癌抑制遺伝子であるp53に対するドミナントネガティブ効果をもってアポトーシスを抑制することから、このアイソフォームの発現は眼表面上皮細胞の特に幹細胞ないしTA細胞のような増殖活性の高い細胞でのアポトーシス抑制に関連していると考えられる。眼表面上皮においてアポトーシスが生じやすい状況としてwound healing Processがあり、このような状況でp63がどのような働きをしているかについて検討するため、ウサギのp63のクローニングと完全長cDNAのシーケンスを行った。この配列に基づきRT-PCRを行ったところ、ウサギ角膜上皮のwound healing processにおいてはTAp63アイソフォームはほとんど発現しておらず、ΔNp63アイソフォームが優位であった。次にα、β、γに対するreal-time PCRを行ったところ、wound healing processにおいてすべてのアイソフォームで発現上昇がみられた。またp63の組織分布について解析するため、抗体が市販されていないβアイソフォームに対するポリクローナル抗体を作成した。結果、αアイソフォームは輪部からwound healing edgeにかけての基底細胞の核に発現していた。またβアイソフォームは輪部からwound healing edgeにかけての上皮基底に発現しており、またその細胞内分布は興味深いことに核ではなく細胞質であった。今後紫外線照射時のp63アイソフォームの役割、βアイソフォームの細胞内局在と機能について詳細に検討する予定である。
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