研究概要 |
ヒト網膜の再生能力は極めて乏しい。それ故、網膜の損傷や変性に対して、網膜細胞に分化し得る幹細胞による細胞移植療法はひとつの治療選択肢となる可能性がある。 ES細胞から網膜関連細胞への分化は、胚様体形成による非方両性分化ではきわめて稀である。それ故、本研究では、まず、すでに確立された段階的神経分化誘導法にてマウスES細胞を神経幹細胞(ES-NSC s)に分化させ、その後に網膜関連細胞への分化を試みた。ES-NSC sから網膜関連細胞への分化させる好適な環境の賦与に、トリ初期胚網膜との共培養を考案した。ES-NSC sとE-6のトリ網膜をseparate chamberを用いて共培養した。この培養方法により、全培養細胞中の約20%をロドプシン陽性細胞に分化させ得ることが可能であった。さらに、ロドプシン陽性細胞視細胞に限らず、アマクリン細胞、水平細胞、双極細胞などの神経網膜関連細胞マーカーを有する細胞の出現も確認できた。興味深いことに、網膜発生早期に発生する双極細胞は、トリ初期胚網膜との共培養でも、早期より出現し、一方、後期発生のロドプシン陽性細胞視細胞は共培養により遅れて徐々に現れることも判明した。これらの分化した網膜関連細胞は、細胞棒移植療法の細胞源として使用できる可能性がある。 これらの成績は、2005年12月奈良市にて開催された奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)と理研・神戸発生再生センター(CDB)の合同シンポジウムにて発表し、その同要旨は、Photoreceptor cells from mouse ES cells by co-culture with chick embryonic retinaとしてBBRC 332:241-247,2005に掲載された。
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