近年、自己免疫疾患における免疫制御メカニズムについてその解明が進み、CD4^+CD25^+のマーカーを発現したT細胞(CD25^+制御性T細胞)が末梢における免疫寛容機構において自己免疫疾患の発症制御に強く関わっていることが証明されている。今回我々は内因性ぶどう膜炎の動物モデルとして知られる実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(以下EAUと略す)に対してCD25^+制御性T細胞の養子移入による抑制効果について検討を行った。 1.ぶどう膜網膜炎発症期(Effector phase)におけるCD4^+CD25^+制御性T細胞を用いたEAUに対する免疫制御の試み 網膜抗原であるInterphoto-receptor retinoid binding protein (IRBP)を免疫後7日目に正常マウスの脾臓より採取したCD4^+CD25^+制御性細胞およびCD4^+CD25^-細胞を2x10^6個静脈内投与し、免疫後21日目に眼球を摘出し組織学的検討を行ったところ、CD25^+制御性T細胞を移入された群において炎症スコアの有意な低下が認められた。 2.CD25^+制御性T細胞によるIRBPペプチド特異的遅延型過敏反応の抑制の検討 IRBPペプチド免疫後7日目に正常マウスの脾臓より分離したCD4^+CD25^+細胞およびCD25^-細胞を養子移入し免疫後20日目にIRBPペプチド(20μg/マウス)をマウス耳介皮下に接種、翌21日目に耳介の腫脹を測定したところ、CD25^+制御性細胞Tを移入された群においてIRBPペプチドに対する遅延型過敏反応の有意な低下が認められた。 3.CD25^+制御性T細胞によるIRBPペプチド特異的T細胞増殖反応の抑制の検討 IRBPペプチド免疫後7-10日目に頚部リンパ節を摘出し、single cell suspensionを作成した後、同様のペプチドを用いて刺激加える際naiveなCD25^+制御性T細胞と共培養し、リンパ節細胞の増殖能を検討したところ、IRBPペプチド特異的T細胞の増殖反応が有意に抑制された。 以上の結果よりEAUの発症期に移入されたCD25^+制御性T細胞は所属リンパ節に存在する抗原特異的なeffector T細胞を抑制することでぶどう膜炎の軽症化を誘導していると考えられた。
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