研究概要 |
角膜局所における抗原提示細胞のチオールレドックスを効率的に変換する手法として、結膜下投与法を確立した。結膜下にN, N'-ジアセチルシスチンジメチルエステル(NM2)やデキサメサゾンを微量注入することにより、角膜のグルタチオン濃度が有意に減少し、全層角膜移植、角膜輪部移植の拒絶反応を有意に抑制出来ることを明らかにした。また、この抑制はMHC適合によって著明に明らかとなり、拒絶遅延ではなく、生着をも促す結果となった。また、MHCセミ適合でもMHC適合と同等の抑制が得られることがわかり、臨床におけるクラスII部分適合などの有用性を示唆する結果となった。局所のチオールレドックスの評価においては、凍結包埋を行った薄切標本を用いて評価可能で、移植後早期の角膜上皮のグルタチオン減少(酸化ストレスによる結果と考えられる)と角膜実質細胞のグルタチオン増加(還元型マクロファージ誘導)が明らかとなり、移植における角膜内の免疫応答をより明らかにすることができた。 しかし、チオールレドックス偏倚による拒絶抑制はBALB/cマウス、CBF1マウス、B6C3F1マウスをホストとして用いた際には非常に有意な抑制効果が見られたが、C57BL/6マウスにおいてのみ、全く効果を得ることが出来なかった。従来よりC57BL/6マウスとBALB/cマウスにおける拒絶応答は全く異なった拒絶率・拒絶時期・宿主応答を示していた。臨床応用にむけて、C57BL/6マウスにおいても拒絶抑制可能な手法の創作が今後の課題であり、C57BL/6マウスにおける拒絶メカニズムを解析中である。
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