研究概要 |
申請者は平成17年度において次の実験を行い以下の結果を得た。ラット褐色細胞腫から確立され、血清非添加培地でアポトーシスを誘導できるPC12細胞を、血清を添加したRPM1640培地で培養し、血清非添加培地に交換したのち0,01、0.1、1または10μMのニプラジロールまたは一酸化窒素供与能力を持たず一酸化窒素供与の影響を除くことができる脱ニトロ・ニプラジロールを添加して12、24、48時間培養して、血球計算盤を用いて生存細胞数を計数した。さらに染色体DNAを抽出しアガロースゲル電気泳動でラダー形成を確認してアポトーシスの程度を検討した。また細胞からRNAを抽出し、Bax、Bcl-2、Fas、FasL、Caspase-1、2、3と9、P53とSmac/DIABLOの遺伝子発現を定量的リアルタイム・ポリメラーゼ連鎖反応法(リアルタイムPCR)によって調べた。PC12細胞を血清非添加培地で培養すると48時間でアポトーシスが誘導され細胞死がみられたが、0.1と1μMのニプラジロールによって細胞死が抑制された。脱ニトロ・ニプラジロールは細胞死を抑制しなかった。染色体DNAのラダー形成は12または24時間でははっきりしないが、48時間では2%のアガロースゲル電気泳動で約300から1200塩基対の間で明らかに見られ、0.1または1μMのニプラジロールによって抑制された。脱ニトロ・ニプラジロールは、DNAラダー形成を抑制しなかった。Bax、Caspase-9とSmac/DIABLOの遺伝子発現は血清非添加培地で12時間後に上昇し、ニプラジロールを添加することによって低下した。脱ニトロ・ニプラジロールでは低下しなかった。ニプラジロールは一酸化窒素供与を介したメカニズムでPC12細胞における血清非添加培地でのアポトーシスを抑制し、アポトーシス関連分子の遺伝子発現を制御することが示された。
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