研究概要 |
ラット左視神経の挫滅直後から、α2アドレナリン作動薬であるキシラジン、クロニジンを連日腹腔内投与すると、挫滅後14日目の視神経内において、順行性標識された視神経線維が中枢側へ再伸展された。また、軸索再生のマーカーであるGAP-43の発現も、α2アドレナリン作動薬投与により視神経・網膜において上昇していた。さらに、α2アドレナリン受容体拮抗薬の前投与により、軸索再生効果が抑制されるか否かを検討したところ、キシラジン、クロニジンともに軸索再生効果は有意に抑制された。 α2アドレナリン作動薬による軸索再生の作用機序を明らかにするため、RT-PCR法を用いてこれまでに報告されている軸索再生促進効果のあるCNTF, BDNF, FGF-2のmRNAの発現レベルを検討した。その結果、CNTFの発現レベルが挫滅後早期から上昇していることが明らかとなり、免疫染色にてCNTFの発現上昇はミューラー細胞に強くみられた。これらのCNTFの発現上昇は、アドレナリン受容体拮抗薬により、顕著に抑制された。さらに、α2アドレナリン受容体の局在に関しては、α2B受容体が正常網膜のミューラー細胞に発現していたため、以上の結果から、α2アドレナリン作動薬投与により、網膜ミューラー細胞のα2B受容体を介したCNTFの発現上昇が誘発され、軸索再生に至った可能性が示唆された。現在、培養ミューラー細胞を用いて、軸索突起伸展の促進物質の検討を行っている。
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